みなさん、「水平思考」という単語を聞いたことはありますでしょうか?

「水平思考(すいへいしこう、英語:Lateral thinking)」という単語は、マルタ出身の心理学者で医師でもあるエドワード・デボノ氏(Edward de Bono)によって、1967年頃に提唱されました。

これは、論理を順序だてて深掘りする「垂直思考(Vertical thinking)」に対して、問題解決のために既成概念や常識にとらわれず、新しい視点から自由な発想でアイデアを生み出す思考方法として導入されました。

 

話を整理すると、「限られた条件下であり、正解があるものを高速に探し当てるのは、垂直思考」です。

大学受験や資格試験といったものに強い人は、この垂直思考に優れているとも言えます。

一方、正解の無い(あるかどうか分からない)世界で解決策を見つけるのは、水平思考」といえるでしょう。

人工知能(AI)が強いのは?

現在のAIが強いと言われるのは、圧倒的にこの「垂直思考」です。

処理スピードといい、知識といい、人間が太刀打ちできるレベルにありません。

ですので、「今後、AIが我々の仕事、とくにホワイトカラーの仕事を奪っていく」と言われている訳ですね。

そのため、我々は今後、垂直思考を磨くことに費やすのは得策と言えないという話にも繋がってきます。

そこから構造的な閉塞感を崩し、新しいものを産み出す「水平思考」の時代が来るという仮説も成り立ちます。

「水平思考」を極めるとどうなる!?

その水平思考ですが、歴史上において、圧倒的な成果を出した人物は誰でしょうか?

もし、一人挙げろと言われれば、「レオナルド・ダ・ヴィンチ」でしょうね。

ちなみに、レオナルドの功績を簡単にご紹介しますと、彼は、約500年前にイタリアで活躍した、「万能の天才(ルネサンス・マン)」と呼ばれる人物です。

彼は単なる画家ではなく、芸術家、科学者、発明家、解剖学者、建築家など、極めて多岐にわたる分野で人類史上最高の知性を発揮しました。

画家として: 世界で最も有名な肖像画である『モナ・リザ』や、キリスト教美術の傑作『最後の晩餐』を描きました。

科学者・発明家として: 飛行機やヘリコプターの原型となる機械、潜水服、戦車など、当時の技術水準を遥かに超えた未来的なアイデアをスケッチに描き残しました。

解剖学者として: 芸術的なリアリズムを追求するために、人体解剖を深く研究し、現代の医学書にも匹敵する精密な解剖図を残しています。

つまり、レオナルドのすごさは、これらの異なる分野の知識を「水平的」に結びつけ、新しい発想を生み出す点にありました。彼は、絵画のために科学を、科学のために芸術を利用した、人類の創造性を象徴する偉大な人物です。

こうして彼の功績を挙げていくと、漫画の世界の登場人物みたいなチート感がありますね。

AIも「水平思考」をするのか?

それはさておき、「水平思考」には、幅広い知識があればあるほど良いということです。

世界の偉人でも、幼少期に図書館に入りびたり、「近所の図書館の本は、ほとんど読んだ」といった話は時折耳にしますね。

そう考えると、AIもいずれそのような高度な水平思考を行うようになるのでしょうか?

現在はまだ「推論」のレベルですが、もし人間のような「水平思考」を行い始めると、確かにシンギュラリティが起こるような気もします。

しかし、既存のAIにやらせようとすると、無限に近いリソースも必要でしょうし、下手したら無限ループに入って回答が出てこないような気もします。

現状のAIは、垂直思考の権化のようなもので、人間の思考スピードの何億倍もの計算をするのでしょうが、そもそもその前提に正解が無い場合、つまり、その下に水脈が無い場合、いくら高速で掘り続けても水は湧いてこない訳です。

そこでAIは途中でそのミスに気づき、違う場所を掘り始めることができるのでしょうか?

多くのAI擁護派は、「AGI、ASIで実現できる!」と力説します。

個人的な感想を言えば、識者が言う「AGIレベル」ではまだ不可能だと思うのです。(そもそも、AGIの定義自体が曖昧な点が多いのですけど)

まだまだ、水平思考においては、人間の優位性は残る気がします。

なお、ASIに関しては、その実現自体が眉唾ものだと考えているので、ここでは省略します。