WinActorは、日本の多くの企業で業務自動化の立役者として活躍してきました。

私も元々は、WinActorのエンジニアとしてスタートしました。

販売元がNTTであり、純国産RPAツールであり、有償セミナーも全国で行われていて、日本語のコミュニティサイトも充実している。

使い慣れたツールであり、現場の業務改善に大きく貢献している。

しかし、「このままで良いのか」「将来性に不安はないか」と感じている方も多いのではないでしょうか?

 

結論から申し上げます。

WinActorは、機能的に時代遅れになりつつあります。

もしWinActorからの乗り換えを検討しているのであれば、早ければ早いほどいいでしょう。

なぜなら、その決断を先延ばしにするほど、将来的に大きなコストと時間の無駄につながるからです。

ちなみに、RPAツールの乗り換え先としては、料金と将来性(拡張性)から、マイクロソフトの「PowerAutomate」を推奨します。

WinActorを使い続けるデメリットと乗り換えを急ぐべき理由

WinActorを使い続けることには、無視できない複数のデメリットがあります。

その中でも、RPAの乗り換えを検討する上で最も重要な決定打となるのが、既存のシナリオはそのまま使えないという事実です。

1. WinActorのシナリオはPower Automateでは再利用できない

WinActorとPower Automateは、それぞれ異なるプログラミング言語とインターフェースで構築されています。

このため、WinActorで作った業務自動化シナリオを、Power Automateのデスクトップフローにそのまま移行することはできません。

つまり、現在WinActorで稼働しているすべてのシナリオは、Power Automateでゼロから作り直す必要があるのです。

これからWinActorで自動化する業務の数が増えれば増えるほど、将来的な乗り換えにかかるコスト(シナリオ作成にかかる時間と人件費)は雪だるま式に増えていきます。

無駄な手戻りを避けるためにも、1つでも多くのシナリオをWinActorで作ってしまう前に、Power Automateに切り替えるのが賢明な選択と言えるでしょう。

2. AIエージェント時代への乗り遅れ

今後の業務自動化のトレンドは、単一のアプリケーションを操作する「RPA」から、複数のツールやクラウドサービスを自律的に連携させる「AIエージェント」へと移行しています。

Power AutomateがAPIを介してOffice 365やSalesforceといったクラウドサービスとシームレスに連携し、業務プロセス全体を自動化する一方で、WinActorは依然としてPC上の画面操作を主軸としています。

WinActorも生成AIとの連携機能を強化していますが、これはあくまで「PC上での作業をより賢くする」という範囲にとどまります。

複数のサービスを横断する複雑な業務を統合的に自動化する点では、Power Automateの「クラウドフロー」に大きく遅れをとっています。

この構造的な違いは、企業全体のDXを加速させたいと考える企業にとって、大きなデメリットとなります。

3. 成長の限界と市場の縮小リスク

WinActorは、レガシーシステムや日本の商習慣への対応に強みを持つ、ニッチな市場のリーダーです。

しかし、この市場は、企業のクラウド移行が進むにつれて徐々に縮小していく可能性があります。

無料で使えるPower Automate Desktop(PAD)という強力な競合の存在は、新規ユーザー獲得の大きな障壁となり、WinActorは既存顧客の囲い込みに注力せざるを得ない状況に追い込まれています。

このため、長期的な成長性という観点から見ると、大きな課題を抱えていると言わざるを得ません。

Power Automateへ乗り換える3つのメリット

WinActorからの乗り換えは、単なるツールの変更ではなく、ビジネスの将来性を左右する重要な投資判断です。

Power Automateへの移行は、以下のような明確なメリットを企業にもたらします。

1. クラウド連携による業務プロセスの統合

Power Automateの最大の強みは、「クラウドフロー」と「デスクトップフロー」を組み合わせることで、業務の最初から最後までをシームレスに自動化できる点です。

例えば、「特定のメールが届いたら(クラウドフロー)、添付ファイルをOneDriveに保存し、PCのデスクトップフローを起動して、保存したデータを社内システムに入力し、入力完了後にTeamsで担当者に通知する」といった、部門横断的で複雑な業務を、一連のフローとして構築できます。

これは、WinActor単独では実現が難しく、RPAをより広範な業務プロセスに適用可能にします。

2. AI機能のシームレスな組み込み

Power Automateには「AI Builder」というAI機能が標準で組み込まれています。

追加のAPI設定なしに、ドキュメントからのデータ抽出、テキストの分類、感情分析などをフローに簡単に組み込めます。

これにより、単純な定型業務だけでなく、非定型業務やデータ分析といった高度なタスクも自動化の対象にできます。

これは、業務プロセス全体に「AIによる判断」を組み込むことを意味し、企業全体の生産性を飛躍的に向上させます。

3. 圧倒的なコストパフォーマンスとエコシステム

Power Automate Desktopは、Microsoft 365の多くのプランに無料で含まれています。

多くの企業がすでに所有しているライセンスをそのまま活用できるため、追加投資なしでRPAを始められます。

これは、特にIT予算が限られている企業にとって、非常に大きなメリットです。

さらに、Windows、Office、Teams、SharePointといった巨大なエコシステムの中で、技術情報やサポート、テンプレートが豊富に提供されており、ユーザーのスキルアップや課題解決を力強く後押しします。

まとめ:RPAの乗り換えは、未来への投資

WinActorは、確実な業務効率化という価値を提供し続けるでしょう。

しかし、企業のDX戦略が次の段階、つまり「攻めのDX」へと移行するにつれて、その限界は明らかになります。

Power Automateへの乗り換えは、単にツールを置き換えるだけでなく、「業務のあり方そのものを再定義する」ことに他なりません。

デスクトップ上の作業だけでなく、クラウド全体を巻き込んだ業務プロセス全体を自動化することで、企業全体の生産性を向上させ、将来の市場変化に対応できる柔軟なビジネス基盤を構築できるのです。

もし、貴社がレガシーな環境から脱却し、よりスマートで効率的なビジネスを目指すのであれば、今こそ乗り換えを真剣に検討すべき時です。

手戻りが最小限のうちに、未来志向のRPAへと舵を切る決断が、貴社の長期的な成長を左右するでしょう。