他社のRPA導入(内製化)は、上手くいっているのか?

RPAエンジニアとして、数多くの企業のRPA導入を見てきましたし、お手伝いもしてきました。

時には調査会社が定期的に発表しているデータもチェックしています。

そこから言えることですが、残念ながら「RPAツールの導入(内製化)が上手く行っていない会社が多い」ということです。(※「内製化」とは、RPAツールを使って、自分達でロボットを作り、それらを運用していくことを指します。)

導入自体を最初から諦めている会社もあれば、高額なRPAツールを購入したものの、使いこなせずにライセンスが切れると同時に辞めたという話も結構聞きます。

もちろん、とても上手くいって、「RPAツールの導入で年間10万時間の削減を達成!」といった華やかな実績をあげたものも珍しくありませんが、そのほとんどはコンサルティング会社などのプロの手厚いサポートを受けて達成しています。

正直、プログラミングの素地が無い人達が、市販の書籍を片手に自分達だけで「内製化」を達成するのは、極めて難しいと言えます。

 

「内製化」がベストなのか?

RPAを社内導入する上で、「外注(アウトソーシング)」と「内製化」とでは、どちらが良いのか?と言われれば、即答は難しいです。

もちろん、自分達でロボットをちゃんと作れて運用できるようになれば、ロボット作り放題となり、社内業務の自動化が大きく進むでしょう。

それはコスト的にみても、理想的ではあります。

しかし、RPAツールは、マウスとキーボードで操作できるあらゆるアプリケーションを自動化できるという反面、作成時と少しでも環境が変わると、ロボットがエラーで止まるように出来ています。(ここでいう「環境」とは、テキストやボタンの配置や要素などを含み、ブラウザやアプリケーションの自動アップデートを起因とする場合が多いです。)

つまり、内製化する場合には、時折発生するUI要素の変更をはじめ、社内の業務変更に伴う機能追加・仕様変更などに対応できる人材をキープしておく必要があります。

ここが昔流行った「エクセルマクロ」と大きく違う点でもあり、一度作成したら終わり!とはならないのです。

そう考えた場合、RPAにおいても必ず内製化が一番良いと言い切れないのではないか?」という考えが出てくるのです。

 

RPAの「内製化成功」を左右する要素とは?

では、内製化の成功を決める要素とは何でしょうか?

個人的な経験からの結論ですが、導入において「上手く行く会社」と「行かない会社」の違いとしては、次の2つが大きな要因になっていると思います。

ヒューマンリソース ⇒ 仕事が忙しすぎず、スキルアップとしてRPA習得に関心があり、この先長くこの会社で働いていくつもりであるという人が複数いる。(習得者が1人だけだと、異動や退職で不在になった際、既存ロボットの保守も出来なくなってしまう)

会社のバックアップ ⇒ 教材費用やサポートサービスを援助し、業務中にもある程度勉強できる環境を与えることが出来る。スタッフのやる気にお任せではなく、基本的にプロジェクトとして進捗を管理しながら推し進める必要がある。

 

もし、この2つを十分に行えそうにないという状態であれば、RPAによる業務自動化・効率化は外注(アウトソーシング)した方が良い結果になりやすいです。

とはいえ、ロボット作成の外注の相場は、依頼先となる「システム会社の規模」と「自動化対象のロボットにかかる工数」によって異なりますが、1つにつき20~30万円程度、保守費用は1万円前後(月額)ですから、中小企業においては、結構ハードルが高いと言えるでしょう。

大企業の場合には、1つの作業に対してのボリュームが大きいので、そのような金額でもすぐに元が取れるのです。

一方、中小企業の場合だと、コストメリットが出づらいケースが多いと思います。

 

しかし、これから日本においては、少子高齢化に伴う人手不足が多くの会社において切実な問題になってくるのは、ご存知の通りです。

それを乗り越えるための有力な選択肢は、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉に代表される「省力化」です。

そういう意味では、RPAはまさに「省力化」の代表的なツールですので、多くの企業にとって福音となるものです。

そのため、是非多くの企業で上手く導入し、皆様のライフワークバランスの向上にも役立てて欲しいと願っています。