NTTデータが販売している「WinActor」。

言わずと知れた日本でのRPAシェアNo.1のRPAツールです。

最近では「UiPath」に押されているそうですが、純国産ということと、取り扱っている企業が多いこともあり、依然として人気のRPAツールです。

 

さて、WinActorを含む「日本三大RPAツール」と言われ、寡占化されたRPAの市場に、突然ゲームチェンジャーと言えるようなRPAツールが登場しました!

それは、マイクロソフトの「Power Automate Desktop(以下、PADと表記します)」です。

実際には、有料版と無料版があり、機能に差があります。

簡単に言えば、有料版は「法人向けサービス」であり、無料版は「個人向け」の位置づけで、
・作成したロボットの共有が出来るかどうか?
・PowerPlatform内の他サービスとの連携が出来るか?
という点に大きな違いがあります。

今回は、「WinActor」と「Power Automate Desktop(有料版)」の両方を使ってみて、気づいた点を挙げてみたいと思います。

 

「WinActor」と「PAD」の違いとは!?

<その1>価格

一番大きな違いは、ズバリ価格でしょう。

WinActorは、フル機能版で、年間約100万円(税込み)。

一方、PAD(有償版)は、年間約6万円(税込み)。
※(訂正)2023年8月頃に価格変更があり、年間約25,000円(税込み)になりました!

桁が違うんですけど!?と言いたくなる価格差です。

WinActor側では、「フル機能版」と「実行版」の2つに分かれており、価格も違います。(「実行版」は「フル機能版」で作成したロボットを動かすだけで、ロボット自体は作れない。)

しかし、PADの有料版においては、1シリーズのみです。(※Power Automate としてみた場合には、複数あります。)

また、「自動化できればいい」という目的だけであれば、ほとんどの場合、無料版で用が足ります。

 

<その2>使いやすさ

純国産として生まれたWinActor。

特にWinActorは、初めてRPAを利用する人を対象に考えられたRPAツールだと言えます。

見た目は少々オモチャっぽいUIですが、フローが分かりやすく、確かに数多くあるRPAツールの中でもトップランクと言えるレベルで、初心者に優しい造りになっています。

一方、PADは元々英語版で提供されていた「WinAutomation」というRPAツールが下地になっています。

こちらもシンプルで使いやすい造りになっていますが、「どちらが初心者向きか?」と言われれば、WinActorに軍配が上がると思います。

しかし、使い慣れてくると、コピー&ペーストのし易さ、1画面における情報の見やすさなどもあり、WinActorよりも速くロボットを作成することが出来るので、ちゃんと人から習うことを前提にするのであれば、どちらを選んでも良い気がします。

 

<その3>機能差

どこまでをRPAツールの機能とみなすか?という線引きが少し難しいです。

というのが、PADに関しては、Power Automate と呼ばれるクラウドサービスの1サービスとして位置づけられています。

有料・無料の機能があり、そこまで含んでしまうと、少々不公平になると思うので、今回は純粋にデスクトップ上の作業を自動化するという機能に絞ってお話したいと思います。

まず、大前提ですが、「成果物」という意味においては、どちらを使っても自動化できるケースがほとんどです。

ただ、WinActorの方がパーツの数が多く、WinActor単体で完結できるケースが多いと言えます。

1つ例を挙げてみます。

RPAによる自動化でよく行うのが、Excel操作です。

このExcelを操作するというパーツの数が、WinActorの方が多いのです。

特に、通常であればVBAを利用しないと出来ないようなことが、WinActorのパーツ1つで可能になるのです。

一方、PADでは、「Excelマクロの実行」というパーツを使い、事前にExcelブック側に作成したマクロを動かすという仕組みになります。

 

<その4>保守性

もし、WinActorユーザーが、PADに切り替えた場合、気になる点がココだと思います。

それは、作成したロボットの保存先です。

WinActorの場合、基本、クライアントPCの中に保存されます。

一方、PADの場合、マイクロソフトのサーバ側に保存されます。

ここは、正直なところ一長一短です。

WinActor側の立場で言えば、インターネットが繋がっていない状態でも、ロボットを作成し、動かすことが出来ます。

それは、そのパソコンさえ無事であれば、いつでもどこでもRPAを使えるということになります。

PAD側の立場で言えば、ロボットはクラウドサーバに保存されるので、RPAツールがインストールされているパソコンが万が一故障しても、作成済みのロボットを紛失するということはありません。

 

<その5>その他

「WinActorとPADのどちらを採用すべきか?」

下記の点において、特にコダワリがなければ、PADをお勧めします。

なんだかんだ言っても、無償で利用できるというのは強いですから!

 

「WinActor」の場合、資金的に余裕のある会社であっても、必要ギリギリのライセンス導入ということになるでしょう。

RPAで自動化したい業務というのは、月末・月初に集中しがちです。

最低限のライセンス数で動かしている都合上、利用の順番待ちになりやすく、十二分にRPAの恩恵を感じづらい状況になるかもしれません。

実際、久しぶりに動かすロボットは止まる(環境が知らないうちに変わっている)ことも少なくなく、その修正でさらに時間が掛かるということもありますね。

その点、PADの場合には、インストールし放題ですから、実質一人1台ということも可能であり、利便性に大きな違いが出ます。

そのため、個人的というか、弊社としては、将来性も勘案すると「PAD推し!」です。

 

但し、全ての人・企業に対して推奨できるか?と言われれば、NO!です。

下記の内容が運用上、問題にならないと言える方に…という条件付きとなります。

現状のPADにおいて、とても使い勝手の悪いと思わされる点があります。
(今後、変更されるかもしれませんが、現状、気になる点です)

それは、

①『作成したロボットのエクスポート・インポートが出来ない』

世の中にあるほとんどのアプリケーションは、そこで作成したファイルを他のパソコンでも利用できるものです。

しかし、PADに関しては、エクスポート・インポートの概念が無く、クラウドサーバを共有できるグループ内だけの利用となっているのです。(共有できるのは有料版のみ)

但し、裏技を使えば手間はかかるものの、フローのやり取り自体は可能です。

 

②『常にインターネット接続しておく必要がある』

PADで作成したロボットは、クラウドサーバに保存されます。

そして、ロボットを走らせる時にも、毎回ダウンロードして稼働という流れになっています。
(スタートボタンを押すと、ロボットのステータスが、一時的に「ダウンロード」という表示になる)

この意味するところは、ロボットが保存されているマイクロソフトのサーバが停止した場合、RPAが使えないということなります。

「マイクロソフトほどの大きなIT企業が管理するサーバなら、まず止まらないんじゃないの!?」と思われるかもしれません。

しかし、実際のところ、GAFAM(Google, Apple, Facebook, Amazon, Microsoft)が提供しているクラウドサービスにおいても、時折トラブルで使えなくなるという事象が起きており、ニュースにもなっています。

なので、その可能性を頭に入れて、RPA化する必要があるということなります。

運用において、クリティカルな業務で、半日でも止まろうものなら、大損害となるような業務には向かないということです。

まあ、そもそもRPAはクリティカルな業務の自動化は推奨されていませんが。。

 

あと、最後に弊社から申し上げるとすれば、WinActorを導入しようとすると、最低でも年間約100万円のライセンス料が毎年発生します。

月額で言えば、約8万円。

それであれば、そのお金でPADを使った自動化を外注した方が、作成・運用の心配がなくなると思いますが、いかがでしょうか?

弊社でも、基本リモートで作成・保守を対応しておりますので、PADの外注をご検討中であれば、お気軽にご相談ください。