WinActorのRPAエンジニアとして働いていた時から、「RPAは、DXである」という主張に対して違和感がありました。

確かに株式市場を見ると、RPA関連の会社は、DXの推奨銘柄として挙げられています。

そして、そのRPAツールのメーカー自体も、「我々はDXのツールである」という立ち位置を採っているように見えます。

■DX(デジタル・トランスフォーメーション)の定義とは

そもそも、この「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」という単語ですが、明確に定義されていないキーワードです。

「マーケティング」という単語と同様、人によって定義が微妙に異なるのです。

方向としては同じようなことを言っていますが、使っている単語を見ると、様々という感じです。

 

Wikipediaで、DXの説明を見ると、

「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という仮説である

となっています。

一方、総務省のホームページでは、

「デジタル技術の活用による新たな商品・サービスの提供、新たなビジネスモデルの開発を通して、社会制度や組織文化なども変革していくような取組を指す概念である」

となっています。

■「IT化」と「DX化」の違いとは

「IT化」というと、Windows95が登場したあたりからでしょうか。

多くの企業も家庭もこぞってパソコンを購入しました。

そして、企業では紙媒体をスキャナーで読み込んで、画像データとして扱うようになったり、請求書の郵送を止めてメール送信に変更するようになったりしました。

こういったものが、アナログ⇒デジタルの象徴的なものと言えるでしょう。

ではここで、「IT化」の説明をみてみましょう。

「IT技術やデジタル技術の活用によりアナログな作業をデジタルに変換して、業務効率化やコスト削減を目指すこと」

となっています。

うーん、2022年時点のRPAを見てみると、「DX化」よりも「IT化」の方がしっくりくると思うのでは、自分だけでしょうか!?

「業務効率化」は、RPAの代名詞ですからね。

■今から、RPAを導入する必要は無い!?

時代は「DX」なのだから、今からRPAを使って「IT化」をする意味はない?

答えは、「NO!」です。

今更ですが、日本の生産性の低さは世界屈指です。

過去の成功体験に胡坐をかいて、今や低生産性の代名詞のようになっています。

なので、政府も慌てて「DX!」という言葉を連呼し、デジタル庁なるものまで立ち上げて、改革の旗振り役になろうとしています。

 

それほど力を入れている「DX化」ですが、ほとんどの企業で上手く行っていません。

何故でしょうか?

私見としては、そもそも「DX化」の下地となる「IT化」が十分に出来ていないからだと思います。

「DX」の為の「IT化」とは?

「DX」の定義も、それぞれの立場によって微妙に違っています。

方向性としては、企業の場合、「デジタルデータを用いて、儲かる仕組みを作り、強い会社となる手法の1つ」といったものになると思います。

つまり必要なのは、「デジタルデータ」であり、これが基盤となる訳で、社内では膨大なデジタルデータが扱える態勢が出来ていないとダメなのです。

それは、ハードの面でも、ソフトの面でもです。

一連の作業において、アナログな部分があると、人間の手を入れてなくてはいけず、大きなスピードダウンやヒューマンエラーが起きてしてしまう工程となってしまいます。

そのためにも、下準備として社内の業務を出来る限りデジタル化し、自動化しておくことは必要なのです。

■DXの具体的な効果とは

本来、「DX化」で重視されるのは、「データ」です。

今までは、「職人の経験と勘」で行っていたものを、データというエビデンスを元にして、プランを立てていくことになります。

そこでは、「再現性」と「フィードバック」が担保され、リスクの少ないチャレンジが可能となってきます。

問題は、その「データ」ですが、どうやって集めるか?という課題が各企業において出てきます。

市販のデータを使う方法もあるでしょうが、なるべく自分の会社の消費者に出来るだけ近いデータを使う方が確度が上がってくるでしょう。

先見性のある企業においては、何年・何十年も前から消費者に直接つながるようなチャネルを用意したりと、様々な手法でデータを集めています。

まだ出来ていないという企業は、社内において「生のデータが集まってくる仕組み」の構築に一日でも早く取り掛かるべきだと思います。

■まとめ

という訳で、現時点のRPAは、DXではないというのが、私の結論になります。

ただ、RPAには「クラス」と呼ばれる発展のステージがあり、3段階をもって完成と定義されています。

現時点では、ほとんどのRPAツールが「クラス1」であり、一部が「クラス2」に到達したところです。

そう遠くない将来、クラス3に入ってくると思いますが、そこではAIとの融合度合いが大きく上がってくるので、その時初めてRPAは「DX」の範疇に入ってくると思います。