2025年は「AIエージェント元年」と称され、多くのITメディアや企業が次世代の業務支援の柱としてAIエージェントの可能性を語っています。

しかし、実際にその導入を検討する立場に立ったとき、「今、何ができて、何がまだできないのか?」を冷静に見極める必要があります。

結論から言えば、2025年の現在、AIエージェントという言葉が広く認知されつつあるのは事実ですが、その中身には非常に大きなバラつきがあります。

期待が先行している一方で、実際の導入・運用段階においては、現実とのギャップに直面する企業も少なくありません。

規格が乱立する“AIエージェント元年”

「AIエージェント元年」と呼ばれる2025年。

これはすなわち、まだ黎明期にあるということの裏返しでもあります。

業界全体としては、AIエージェントの定義や構成要素、通信プロトコル、そして役割の分担方法といった基本的な枠組みが、まだ標準化されていません。

現在、OpenAI、Google、Microsoft、Metaなどがそれぞれ異なる思想と設計アーキテクチャを持つエージェント構造を打ち出しています。

つまり、現状は“群雄割拠”の時代であり、「どの設計思想が主流になるのか」「どのプラットフォームに乗るべきか」すら明確でない状況です。

このような中で、自社で一からAIエージェントを構築しようとすれば、将来的に仕様変更や非互換による再構築が必要になるリスクもあるでしょう。

「自律型AIエージェント」は、まだ夢の途中

多くの企業が期待するのが、「AIエージェントが自ら考え、タスクを遂行してくれる」という“自律型”の存在です。

しかし、現時点ではそれを実現できる環境は非常に限られており、技術的にも運用的にも未成熟と言わざるを得ません。

確かに、RPA(Robotic Process Automation)を裏側で動かし、AIエージェントがまるで自分で業務をこなしているように“見せる”ことは可能です。

しかし実態としては、あくまで「AIがスタートボタンを押すだけ」にとどまるケースがほとんどです。

フローの条件分岐やエラー対応は人の手に頼っており、完全な自律化とは大きくかけ離れています。

国内ベンチャーの広告に踊らされないために

国内でも「AIエージェント元年」に乗じて、多くのベンチャー企業が華やかな未来像を掲げています。

「自律型エージェントが御社の業務を変革します」「チャットからあらゆる業務を自動で遂行」といったキャッチコピーが並びますが、実際に裏側を見てみると、その多くがChatGPTやClaudeなど既存の大規模言語モデルにテンプレートプロンプトをかぶせた、“チャットボット+α”レベルに過ぎないのが現状です。

OpenAIでさえ、自律型エージェント(AutoGPTやFunction Calling等)の本格的な運用は“プロトタイプ段階”にとどまり、MicrosoftのCopilot Studioもナレッジ回答には優れていても、複雑な業務処理や意思決定の領域にまで踏み込めてはいません。

それでも「ヘルプデスク用途」なら、実用レベルに達している

ここまでを読むと、「まだ使い物にならないのでは?」と思われるかもしれませんが、実は正しく使えば”非常に有効な領域もあります。

それが、社内ヘルプデスク用途です。

具体的には、以下のような活用が十分に実用レベルにあります:

社内規定やマニュアル、手順書を読み込ませておき、「この書類の申請方法は?」と聞けば適切な案内が返ってくる

社員からのよくある質問(FAQ)に対し、24時間いつでも自動応答する

社内情報だけでなく、業界の専門用語も読み込ませ、新人教育の負荷が軽減させる

このような「与えられたナレッジから、正確に情報を抽出して答える」という用途においては、すでにChatGPTやCopilot Studioなどを活用して効果を出している企業も多数あります。

まとめ:焦って導入するより、「現実的な用途」から始めよう

2025年現在のAIエージェントは、「夢を語る段階」から「地に足をつけて活用する段階」への移行期です。

AIエージェントに過度な自律性や業務代替性を求めると、費用対効果が合わず、むしろ「期待外れ」になってしまう可能性が高いでしょう。

ですが、「できることに絞って導入する」のであれば、既存ツールを活用することで、大きな業務効率化も見込めます。

特に、Power AutomateやCopilot Studioを使って社内の情報共有をAI化”する手法は、初期投資も少なく、すぐに効果を感じられるおすすめのアプローチです。

AIエージェントに未来を託すのはまだ早い。まずは、今、足元で使えるものから。

ちなみに、マイクロソフトもそのことをわかってか、現時点ではCopilot Studioが「無料」で使えます!

試用版登録(60日間)⇒更新(30日間)⇒更新(30日間)・・・という作業が入りますが、AIエージェントとはどういったものなのか?未来の仕事のやり方がどういったものになるのか?といったことを体感するには、とても良いと思います。