約120種類のプログラムで幅広い業種に対応
石川県七尾市にある恵寿総合病院(426床)は、2021年度から医療DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の一環としてRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入しています。RPAは、人間がPC上で行うオペレーションを自動化するツールであり、特に定型業務やデータ処理などの分野で効率化を発揮します。
同病院では、すでに約120種類のロボット(プログラム)を開発しています。また、その適用範囲は医療機関内の業務にとどまらず、幅広い分野に及びます。例えば、医療機関内での予約管理、請求データの処理、患者情報の一括管理などに加え、事務業務、経理、システム保守作業にも適用されています。
この事例は、医療業界のみならず、製造業、物流、サービス業など幅広い分野においてもRPAの導入が進んでいることを裏付けるものです。
1万時間分の業務削減。その時間短縮効果とは?
恵寿総合病院では、RPAの導入により1万時間以上の業務効率化を実現しました。この「1万時間」という数字が持つ時間短縮効果を具体的にイメージしてみましょう。
通常のフルタイム労働者は、1週間に約40時間働き、年間約2,000時間勤務とされています。これを基準にすると、1万時間は約5人分の年間労働時間に相当します。RPAを導入することで、5人分の作業を自動化し、人はより重要な業務に専念できる可能性が生まれます。
医療機関にとって、このコスト削減は単なる経費削減にとどまらず、患者サービスの質を向上させるための投資にもなります。
医療DXとは?
「医療DX」とは、医療現場にデジタル技術を導入することで、医療や業務プロセスを最適化し、患者や医療従事者の負担を軽減し、満足度を向上させる取り組みです。「デジタル技術を活用した業務や社会の大幅な変革」を意味する概念であり、医療DXもこれに基づいています。
具体的な事例としては、電子カルテやAI診断支援、遠隔診療、そして今回のようなRPAの活用が挙げられます。業務効率化の目的は単なる時間短縮ではなく、患者に対する医療サービスの質を向上させることです。例えば、RPAで削減した時間を患者対応に充てることで、医師や看護師の負担を軽減しながら、より質の高いケアを提供することが可能になります。
恵寿総合病院の取り組みから得られるヒント
恵寿総合病院のRPA導入事例は、医療現場でのデジタル技術活用の可能性を示しています。約120種類のプログラムを開発し、1万時間もの業務削減を実現したこの成果は、他の病院にとっても参考になる事例です。
人間がルーチンで行う作業をRPAに任せることで、人的リソースをよりクリエイティブで重要な業務に集中させるという考え方は、DX全般に共通するポイントです。
また、この取り組みによる経済的メリットも大きいと言えます。先述の通り、1万時間の業務効率化によるコスト削減効果は非常に大きく、医療業界だけでなく、他の業界におけるRPA導入の説得力を強化するデータともなります。
医療機関だけでなく、さまざまな業種でRPAを導入し、業務効率化を進めることで、日本全体の労働生産性向上にもつながる可能性があります。デジタル技術の発展とともに、恵寿総合病院の事例は、さらなるDX推進の指標となるでしょう。