私がRPAエンジニアとしてデビューしたのは、『WinActor』です。
数か月の研修を終えて、RPAエンジニアとして現場に派遣され、朝から晩までずっと「WinActor」でシナリオを作り、給与を貰っていました。
なので、WinActorに関しての知識は、かなりある方だと言って良いでしょう。
また、今は他のRPAツールを使っていますので、より「WinActor」の特徴をハッキリ感じることが出来るようになっています。
最初に結論を申し上げますと、タイトルの通り、
・これからRPAツールを勉強したいと考えている方
・社内にRPAツールを導入したいと検討中の方
に対しては、「WinActor」をお勧めしません。
今、私の方はマイクロソフトのRPAツールである「Power Automate Desktop」を主に利用しているので、「そのポジショントークでは!?」と思われる方もいらっしゃると思います。
もちろん、その点は否定しませんが、仮に親友や家族から同じ質問をされても、私は「WinActor」をお勧めすることは無いです。
理由としては、ツール自体の出来が悪い訳ではなく、比較対象がある現時点において、総合的に見劣りするからです。
6,7年前の状況であれば、仕方がない選択だったかもしれませんが、今は状況がだいぶ変わっています。
理由その1:同じことが出来る無償のRPAツールが複数ある
なんと言っても、これが最大の要因です。
RPAツール選択を慎重にしなくてはいけない大きな理由としては、「ほとんどのRPAツールは、年間ライセンス制になっている」ということです。
つまり、有償版RPAツールに関しては、使い続ける限りにおいて、ずっと費用が発生するということです。
一旦導入して、沢山シナリオ(ロボット)を作成してから、利用するRPAツールの変更となると、移行にかなりの手間と時間が必要になるため、最初にしっかり吟味して決める必要があります。
〇フル機能版:908,000円(税抜き)/ 1年間
〇実行版:248,000円(税抜き)/ 1年間
※実行版は、作成されたシナリオ(ロボット)を動かすことは出来るが、作成は出来ない。
なので、作成用にフル機能版を1つ購入、稼働用に実行版を2つ購入といった形で運用するのが一般的。
あと、よく聞く話としては、RPAに任せたい仕事というのは、大抵月末・月初に偏りがちです。
そして、高額なRPAツールの場合、購入されるライセンスの数も当然かなり限られます。
となると、どうなるのか?
はい、ご想像の通り「順番待ちとなり、使いたい時にRPAを使えない」という事態が往々にして起こりがちになるのです。
理由その2:教材・教育環境が充実してきている
数年前のRPA市場においては、有料セミナーで扱われているツールは「WinActor」か「UiPath」くらいしか選択肢がありませんでした。
書籍などの教材にしても同様です。
しかし、それから少しずつですが、市場に様々なRPAツールが登場し、それに伴いインターネットや本屋にもトラブルシューティングに利用できる情報が増えています。
いまや専門のサポートを提供している会社もあります。
もちろん、あまりにマイナーなRPAツールを選択することはどうかと思いますが、一定数のユーザーが存在し、市場において将来性を認められているツールであれば、敢えて「WinActor」を選ぶ必要も無いでしょう。
理由その3:初学者にも使いやすいRPAツールが登場している
これも6,7年前の話になりますが、実質的に選択肢となりえるRPAツールは、「WinActor」か「UiPath」と感じた人は多かったと思います。
その2つを比べた場合、初学者にとっては「WinActor」の方に軍配が上がる状況でした。
どちらのツールも、ある程度のプログラミングの知識が必要とされますが、敷居の低さで言えば、間違いなく「WinActor」でしょう。
それも状況が変わりつつあります。
客観的に見て、今でも「WinActor」の分かりやすさは、業界トップクラスだと思います。
あのフローチャート型と言える視覚的に理解しやすいスタイルは、初学者に優しいと言えます。
ただ、それは取っ掛かりの部分のお話であり、少し慣れてくると使いづらさにも繋がってくる点でもあり、「WinActor」のスタイルが最高のものであるとは言えないのです。
「スクリプト型」と言われるPower Automate Desktopと比べた場合でも、同じシナリオ(ロボット)を作成するなら、「WinActor」の方が操作に時間が掛かります。
理由その4:自宅で勉強できない
無償、もしくは安価なRPAツールであれば、自宅のパソコンにインストールして、時間のある時に個人で勉強するといったことが可能です。
しかし、「WinActor」の場合、インターネットで無料お試しダウンロードといったサービスは提供していないので、やる気のある人が土日祝日、もしくは自宅に帰った後、自分のパソコンで独学ということが出来ないのです。
WinActorは、基本的に法人向けサービスとして提供されているので、そういったことは配慮されていないのですね。
ライセンス購入に迷っている方向けへの試用版ライセンス提供は、販売店経由で行われていますが、かなり期間が限られることもあり、個人として勉強環境を構築するのは難しいと言えるでしょう。
以上、今回は4つの理由を挙げてみました。
今やオンライン・リモートアクセスが一般化した時代になりましたから、「うちは田舎だから、NTTさんくらいしかサポートしてくれるところが無いから・・・」といったことは、RPAツール選択において問題になりません。
RPAにおいても、e-Learningの教材はありますし、行き詰ったらZOOMで画面共有しながら教えて貰うということも普通に行われている時代です。
そういった訳で、数年前に「WinActor」を選んだというのは理解できるのですが、今から新規に「WinActor」を選ぶというのは、個人的に理解しがたいと感じるのです。