RPAの近況
ここ最近、ようやくDXの代表的なツールである「RPA」が、一般用語になりつつあるなぁと感じます。
ちょっと前までは、「アールピーエー? AIか何かなの?」と言われることが少なくありませんでした(苦笑)
しかし、最近では一般的なホワイトカラーのビジネスマンであれば、「聞いたことはある」程度には認知され始めているように感じます。
ゴールドマンサックスの予測では、2025年までに、約1億人の知的労働者がRPAに代替され、バックオフィスにある仕事の8割はRPAに代替可能ともいわれています。
しかし、2022年4月の時点で、残り3年。
「そこまで日本でも普及するのだろうか?」というのが、自分の正直な感想です。
それは、RPAツールが力不足というよりも、経営者側の問題だと思います。
RPAツールを初めとして、DX(デジタル・トランスフォーメーション)への理解が追い付いていないように感じます。
そういえば、「経団連の会長がデジタル相の牧島大臣に、日本がデジタル社会に生まれ変わる最後のチャンスと訴え」という記事が出ていました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e38c8d1bcef94068d02f8ce4a84bb4703d20bc68
5chでの書き込みを見ると、やはり否定的な意見が多かったですね。
その背景にあるのは、「DXを理解していない経営者層が「DXが大事!」と叫んでも、あなたたちが今まで軽視してきたから、こうなったんでしょ!」というもの。
つまり、DXの意味を本当に分かっている人が、経営層に極めて少ないということなのでしょう。
とまあ、非難することは簡単です。
小学生でも出来ます。
そうではなく、ここではもっと生産的な話をしましょう。
「DX」とは、どういう意味なの?
日本の経営者層の多くが勘違いしている点として、「デジタル化の本質」というものが挙げられます。
例えるなら、「レコード(アナログ)」か「CD(デジタル)」かというレベルでしか、分かっていないということです。
なので、結果として、「音楽が聴けるなら、どちらでもいいじゃん!(むしろ、レコードの方が音質いいし!)」という結論になるのでしょう。
特に日本企業の経営者は、パソコンが身近になる前に大学を卒業した文系出身が多いため、アナログからデジタルに変わることによるその価値を体感的に感じ取ることが苦手なのだと思うのです。
世界を見渡すと、先進国では理系出身の若い経営者が幅を利かせているのに気が付きます。
海外の理系は、マネタイズも得意なのです。(起業家を取り巻く環境が整備されているというのもあると思います。)
アメリカなどでは、2000年代からSTEM教育(Science, Technology, Engineering and Mathematics)と銘打った教育モデルを作成し、国策として理系を増やし、労働力開発に力を入れています。
日本がそんな国に、いきなり肩を並べようと目標設定するのは、あまり現実的では無い気がしますね。
話がそれましたが、そもそも「DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは何か?」という理解が重要だと思います。
DXは、単なるデジタル化ではありません。
簡単に言えば、デジタル技術を活用して、劇的に生産性やビジネスモデルを変革しましょう!という、単なるデジタル化よりも高次元の話なのです。
DX実現のために必要なこと
具体的には、マネージメント層に、デジタルの本質を正しく理解している人を据えること。
そして、その人にある程度権限と予算を与えること。
この2点が必要になってくると思います。
そういえば、日本においてもここ数年、IT企業ではない企業が、多くのエンジニアを雇用する動きがあります。
ユニクロやZOZO、星野リゾート等々。
ITを無視して経営をすることは出来ない時代ですので、その重要性を分かっている会社ほど、どんどん内製化が進んでいるのです。
まあ、こういうと、「そりゃ大きな会社だと、資金的にそんな余裕があるけど、うちはエンジニアを抱えるほどの余裕はないなぁ。」と仰るかもしれません。
しかし、ポイントはそこではないのです。
大事なのは、「現在のIT技術を使えば、自社において何をどこまで出来るのか?」という理解です。
これは実際に様々なITツールを使ってみないと分かりません。
DXとして挙げられるツールの1つである「RPA」もそうですが、今まで導入をお手伝いした企業担当者の方とお話していると、「へぇ、RPAってそんなことまで出来るんですね!」と驚かれることがとても多いです。
そしてその後は、「あれが出来るなら、これも出来ますよね?」といった具合に勘所を抑えて、自社の業務全般の自動化に意識が届くようになっていくのです。
ですので、多少なりとも「新しいものを試してみる」ということが大事なのです。
しかし、ITツール導入の注意点としては、社内に知見が無い状態で、いきなり大々的に導入しないことも大事です。
新しいものに最初から高額の投資をすることは、ギャンブルになります。
ヤフー株式会社でのRPA導入事例でも、「RPAで年間●●●時間削減する!」とRPAの知見も無いまま、息巻いて多くのロボットを外注・作成しましたが、実際に使えたものは、ほんの一握り。
ほとんどは、社内のセキュリティポリシーに違反するものや、使い勝手の悪いものばかりになり、沢山のロボットが使われずに放置となったそうです。
という訳で、DX関係のサービスのほとんどは、冷蔵庫や洗濯機のように、買ったその日からすぐ使いこなせるというものではありません。
丸々(作成・保守の両方)外注するのでなければ、かなり長めの習熟期間を設け、教育費や勉強時間を会社として提供することが求められます。
どうしても新しいものを社内に導入しようとすると、最初は軋轢を生み、不和の原因になると思いますが、そこは「生みの苦しみ」であり、伸びている会社ほど短いスパンで創造と破壊を繰り返し、混沌を受け入れていますね。