今、「RPA」というものの存在を知り、自社導入を考えているという方も少なくないでしょう。

RPAツールも数多くあり、どれを選ぶべきなのかと情報収集しているが、なによりも導入した後、ちゃんと自社でスタッフが自分達で使いこなすことが出来るのか不安だと感じていませんか?

そもそも、「RPAは簡単だというが、それでは知識ゼロの人が、どのくらいの時間で使えるようになるのか?」

知りたくありませんか?

 

RPAツールのメーカーの謳い文句と現実の差

まず、売り手の言い分から聞きましょう。

言い方は多少異なりますが、ほぼ同じです。

『RPAツールは、簡単なツールで、ノンプログラマーでもすぐに使いこなせます』

個人的にも独学で始めて、某自動車メーカーでRPAによる開発に携わっていた者としては、このフレーズに凄く違和感を感じます。

それでも、もし私がRPAツールメーカーの肩を持てば、「プログラミングを覚えるより全然楽で、センスの良い人がちゃんとした指導を受ければ、結構簡単にマスターできますよ」とでも言うでしょうか。

 

正直なところ、実際現場では、どうなの?

私の実体験をお話致します。

昔、某自動車メーカーに常駐のRPAチームとして働いていました。

その社内では、我々のような外部から来たRPAのプロだけでなく、自分達(社員)でRPAロボットを作る動きもありました。

最初の小一時間、我々RPA開発チームのリーダーが、ひな形RPAツールの使い方について説明を社員の方にしていました。

そして、2週間くらいの期間を設けて、時折作成中のロボットをチェックして貰うという流れです。

結論として、いくつかのケースを見てきましたが、まともに作れたのは皆無でしたね(苦笑)

一流大学を出た自頭の良い人達が多い集まりでしたが、それでもちゃんとした指導を受けずに我流でのRPAロボットの開発は、ハードルが高かったようです。

 

RPAのプロが思う、RPAの勉強時間はどのくらい必要?

これを明確に定義する前提としては、

・どのレベルを到達点とするか?

・どういった形式で教えるのか?

・スタート地点での知識は、どのレベルか?

・どのRPAツールを選択するか?

・誰がどの教材で教えるのか?

といった情報が必要になってきます。

流石にこれらを正確に決めるのは困難なので、私の経験と周りの人達を情報元として、お話したいと思います。

タイトルにあるように、「知識ゼロの人」がある程度(脱初級者)になるレベルで使いこなせるようになるのに、必要な勉強時間と言われれば、ひとつの目安として「60時間~100時間」くらいでしょうか。

もちろん、ちゃんとした講習を受け、自分の手を使っていくつものRPAロボットを作り上げるという手順を踏んでのお話です。

 

もし、個人でマニュアルと格闘しながらでは、この数倍はかかるでしょうし、場合によっては挫折してもおかしくありません。

内訳として、一方通行の講義(ハンズオンセミナー形式)に30時間ほど、フィードバックのある自習に30時間~70時間が理想的な配分かと思います。

ここで30時間~70時間としているのは、RPAツールに必須の知識として、Windowsやエクセルの操作方法があります。

このあたりの基礎・応用知識があると無いでは、トータルで習得に掛かる時間に大きな差が出る為、幅を持たせています。

つまるところ、車の運転などと同じで、講師からの一方向の講義を受けるだけでは身に着きません。

実際に車を動かしてみて、「あぁ、このくらいのスピードの時に、このくらいハンドルを切ると、このくらい曲がるのだな」といったことを経験していかないとダメなように、RPAツールも習った基礎を元に、自分で様々なパーツを使い、あれこれ試してみないと身に着かないのです。

 

RPAツールの場合には、

①RPAツールが持っている個々のパーツ

②フローチャート作成

の知識と訓練が必須です。

これは、自分の手を動かしてRPAツールで試行錯誤しながら、数多くのロボットを作り、自然と覚えていくのが良いですし、そういった受講者にも考えさせる教材を使うべきだと思います。

 

(おまけ)「個人利用」と「会社利用」の違い!?

あと、あまり議題に挙がりませんが、「個人で使う場合」と「会社で使う場合」、問われるスキルが異なってきます。

「個人で使う場合」には、とりあえず動きさえすればよい!ということに尽きます。

自分しか使わないし、自分が我慢できさえすれば、結構な頻度で止まるロボットでも大丈夫。

一方、「会社で使う場合」には、自分以外の利用者もいる前提で考えなくてはいけません。

 

仮に最初は自分しか使わない前提で始めても、一生その会社にいるとは限りません。

というか、社長でもない限り、いないでしょう。

なので、引継ぎがスムーズに出来るように、第三者が見ても分かるようなコメントの入れ方やマニュアルの整備も必要ですし、なるべく止まりにくいロボットを作る必要があります。

何にも分からない人が使っても、トラブル起こさないような気づかいも必要です。

例を挙げれば、「・・・に数字を入力してください」という表示に対して「文字」を入力する人もいます。

また、RPAロボット自体には問題なくても、読み込むエクセルファイルで出来た台帳側に不備があることも、あります。

そういった様々なケースも考慮する必要が出てきます。

という訳で、そもそもの「設計思想」が異なるのです。

これは独学では身に着かない部分でもあります。

一般の書籍にも詳細には書かれていない、それぞれのシステム会社が持っている「ノウハウ」と言われる知識の蓄積から生まれている部分ですね。

会社の規模が大きくなればなるほど、社内でのRPA利用範囲が広がれば広がるほど、この環境作りの重要性がフォーカスされてきます。

ちなみに、そのへんの知識を弊社の「e-Learning中級編」にまとめていますので、ご興味のある方はぜひどうぞ!