Dog:ねぇ、日本のIT業界って遅れているの?
Robo:おぉ、突然だね。何故遅れていると思ったの?
Dog:最近よくインターネットの記事とかで、「日本の経営者・マネジメント層は、IT音痴である」という趣旨のものを見かけるんだよ。
Robo:なるほど。確かに「セブン・ペイを運営する社長が、二段階認証そのものを知らなかった」とか、「IT担当大臣が、デジタル化とはんこ文化の両立という、意味の分からない発言をする」というのがあったもんね。
Dog:でしょ!
Robo:個人的な意見はともかく、日本企業のITへの投資に関しては、8割が現状システムの改修で、新しいものへの導入は2割程度なんだとか。
Dog:えっ!?本当に?ドッグイヤーと呼ばれるほど進歩の早い分野なのに、ずっと同じものを使い続けているということ!?
Robo:そうですよ。まあこれは氷山の一角で、日本の決裁者は、ハードウェアへのこだわりは凄いけど、ソフトウェアへの関心が薄く、適切に評価できないことが根本原因じゃないかな。
Dog:そういえば、アメリカに比べて日本はプログラマーの評価が低くて、年収も約半分でしたっけ!?そりゃ、日本から世界に通じるようなインターネット関連の会社は出てこないよね。
Robo:時代の寵児と呼ばれる企業は、ソフトウェアの強い会社ばかりだし。時価総額トップ5常連ということでいえば、「Google(アルファベット)」、「MicroSoft」、「Apple」、「Amazon」、「Facebook」、あとはウォーレンバフェット率いる「バークシャーハサウェイ」というところ。この中では唯一「Apple」がハードウェアの売上が占める割合が高いくらいかな。
Dog:じゃあ、日本で1位は、?
Robo:TOYOTAだよ。世界では40位台だけど。
IT(Information Technology)を制するものが、ビジネスを制す!?
■IT導入が難しい理由とは?
「経営者層が悪い!」と一方的に非難することは簡単ですが、どうして上手く最適なITシステム導入できないのでしょうか?
まず挙げたいのは、ITの厄介なところとして、買ってくればすぐ使えるというものではないという性質があるからです。
冷蔵庫や洗濯機を買ってくるのとは、訳が違うのです。
規模の大きなシステムほど、準備と運用開始までにかなりの時間と手間が発生します。
多くのシステムに言えることですが、小さく産んで大きく育てるといった考え方で、有用そうなものはいち早く導入するものの、試験期間を十分に取るというのが成功する導入方法でしょう。
一代で会社をとても大きくした経営者に共通するものとして、「進取性」が挙げられます。
好奇心が旺盛で、通常の人よりアンテナが高く、経験することが好きなのです。
もちろん、ハズレの方が多いと思いますし、1勝9敗ではありませんが、1つ当たれば十分に元が取れるし、外しても会社のキャッシュフローに影響が出ない範囲での支出であれば、将来意外なところでビジネスの種になったりします。
Googleで有名になった「20%ルール」などもその類のもので、やはりそういった目に見えないチャレンジを数多くしている会社が伸びているのだと思います。
株式市場においても、ただ内部留保を積み上げていくだけの会社よりも、積極的に投資している会社の方が評価されるものです。
会社のシステムとして、社内に様々な化学反応が起こるような仕組み造りは、経営者の責務でもあると思います。
自分で出来ないことは、従業員にやって貰えば良いのですが、動機付けとなるシステムなく、勝手に新しいものが生まれることを期待すべきではないでしょう。
■IT導入におけるアメリカと日本の違いとは?
次に、アメリカと日本の経営におけるIT利用の違いについて挙げてみましょう。
ちょっと前のニュースで、
「日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の年次レポート「企業IT動向調査」によると、ユーザー企業のIT予算の8割が既存システムの維持管理に使われている。依然として続く「現状維持8割:新規開発2割」の傾向だ。にもかかわらず、受注するITベンダーやソフトウェア会社はその仕事を「ソフトウェア開発」と言い換えるため、新規ビジネスのためのシステム開発が圧縮されている実態が見えてこない。レガシー負債の清算を先送りにすることは、座して「日本沈没」を待つことを意味している。」
というものがありました。
何故、このようなことが起きるのでしょうか?
色々な意見があると思いますが、個人的な意見として
①経営層がITに疎く、変化を嫌う傾向がある(本人の自覚とは別に)
②ユーザーである社長を含むスタッフ一同のITスキル(ITリテラシー)が低い
というのが大きいと思います。
①については、何をどうすれば会社の生産性を劇的に高められるか?といった知識への貪欲さに欠けた経営者やマネジメント層が多いということです。
しかし、その気持ちも分かります。
なぜなら、新しいシステムを入れるとなると、現場は必ず大なり小なり混乱するからです。
その生みの苦しみの後にはじめて、劇的な生産性向上がある訳ですが、それが劇薬であればあるほど、相当なリーダーシップと実務の知識が必要とされます。
それを嫌って、「現状、何も問題がないのに、どうして敢えてそんな危険な橋を渡る?」という判断の元、システムの耐用年数が過ぎ、更改の時期が来ても今とほぼ変わらないものにリプレースするだけで終わるのです。
まあ、トップが変化を嫌っている中では、リスクを冒してまで新しいものに挑戦しよう!なんていう中間管理職もいませんよね。
そして、②の従業員のITスキルについてですが、これは私個人の感想ではありませんので悪しからず。
2011~2012年に、16歳から65歳を対象として大規模な調査がOECDに加盟している先進国を中心に24か国、約15万人を対象に実施されました。
PIAACと呼ばれる「学習到達度調査」の中で、ITを活用した問題解決能力も測定されました。
結果から言えば、
①パソコンを使った基本的な仕事ができる日本人は1割以下しかいない
②65歳以下の日本の労働力人口のうち、3人に1人がそもそもパソコンを使えない
ということが判明しました。
別にプログラミングの知識があるかどうか?といったものではありません。
ここでの判別方法は、メールによる会議室の予約システムの利用とか、表計算ソフトでグラフをちゃんと使えるか?といったことです。
それがちゃんと出来る日本人は、1割以下という事実です。
知的社会では、ITスキルの高さは生産性の高さと比例してくるという相関関係がありますが、そういった意味でも日本の過去30年において国全体の生産性が上がっていないことと無関係ではないでしょう。
国際競争力が5位なのに生産性は28位。
何が問題か?と言われれば、国の教育方針の失敗であり、無策だったことが原因でしょう。
話が少し戻りますが、アメリカにおいては、
「市販ソフトのシステムに会社の経営を合わせるのが一般的である。」というのがあります。
しかし、日本においては、自社のシステムに合わせてソフトを作成させることが一般的であると言われています。
アメリカでは与えられたソフトウェア(アプリケーション)を使いこなすことを要求され、もっと便利なものが出れば、また新しいものが導入されます。
そして、それをマスターすることを従業員に要求され、それを繰り返していくうちに、新しいものへの適応性も身に着くでしょう。
一方、日本では、極力既存システムと同じものをベンダーやSIerに作るよう要求し、新しいものは現場も使いたがらないという土壌があり、ますますITへの適応性が衰えています。
あまり頻繁にシステムが入れ替わるのは問題ですが、使い慣れているというだけでずっと同じものを使い続けるのは、人的にも保守費用的にもデメリットの方が大きいようです。
伝統工芸品などの職人が使う工具ならそれも良いかもしれません。
しかしながら、利益を追求することが義務付けられている法人としては、グローバルレベルのIT化を基準として考えていかなくては生き残っていけない時代が来ているのは確かでしょう。
なので、数年に1度は意識して社内システムの改革を行い、ハード的にもソフト的にも刺激を与えることが、社内の新陳代謝を活性化させる1つの手段ではないでしょうか。