今回は、この議題について、RPAエンジニア視点で語ってみたいと思います。

私もRPAツールを使い始めて、はや数年。

使い始めた頃の印象と、多くのロボット作成・管理を経験してきた今ではだいぶ印象が変わってきています。

ほとんどのRPAツールメーカーは、「ノンプログラマー(プログラミング未経験者)でも使える簡単なツールです」と謳いますが、そこは改めて否定したいと思います。

単純にコードを直接打ち込む必要がないだけで、下図のような「フローチャート」を頭に描けないようでは、自分でロボットを作ることはできません。

フローチャートを描くためには、プログラミングの基礎知識である「繰り返し」や「変数」、「条件分岐」といった知識が必要になってくるのです。

フローチャート

ここをスキップして進めても、自社の業務を自動化しようとした場合、パソコンを前にして「何をして良いのか分からない!」となります。

ですので、弊社のレッスンにおいては、必ず最初に時間を取ってこの部分をしっかり説明します。(既に分かっている人にとっては、退屈な時間となりますが。)

 

以上は、いままで何度も書かせて頂いたことです。

では、レッスンにおいてその部分を習得し、一通り操作方法を覚えた後はどうなのか?

RPAの難易度を決める要素とは?

RPAツールユーザーに求められるレベルというのは、「その利用環境」によります。

何をどこまで自動化するのか?ということです。

 

私もRPAツールを使って実際に業務を自動化する前は、「RPAって、いわゆるプログラミングもどきでしょ!?」と軽く見ていました(苦笑)

しかし、実務に入ると、イメージがガラリと変わりました。

理由は、『RPAツールは、それ単体で作業が完結することはとても少なく、様々なアプリケーションをはじめ、ネットワーク構成やインターネット環境まで幅広く関係してくる』からです。

実際の例を挙げるとすると、本番稼働中のロボットが急停止し、慌てて確認したところ、原因はロボットの造りではなく、ブラウザの設定にあった!とか、指定のエクセルファイルが突然開かなくなり、調べたところ社内ネットワークに障害が起こっていた!といったことはザラにあります。

あくまでもRPAツールは命令を代行するだけであり、予め設定されたこと以外の事象が起こった場合は、すべてエラーで返してきます。

 

つまり、何が言いたいのかというと、RPAツールの操作を一通り覚えたら終わり!ではなく、利用範囲を広げれば広げるほど、RPAツール以外のこともどんどん勉強していかなくてはいけないということです。

ロボットは作ったら終わり!ではないので、安定した運用のためにも、広い知識が必要になってくることが少なくないのです。

そのためにも、プログラミングの世界で言われる「自走力(※1)」が必要になってきます。

※1・・・「自身の動力で走れる力」という意味で、人に頼るのではなく、自分で調べて自分で解決し、仕事を進めていく能力のこと。

社内の誰にRPAを習得してもらうべきか?

もし社内の誰かにRPAツールを習得して貰いたい!という場合、ある程度「適性」を勘案する必要があるかと思います。

「今まで営業職でやってきたので、あまりパソコンを使う機会もなかった。(なので、エクセルもWindowsも、正直よく分からない)」という方にいきなりRPAツール習得は、やはり難しいと思います。

それでも、RPAを習得したいという場合、「ITパスポート」とか、「MOSのExcel(一般レベル)」の資格取得を終えてから、改めてRPA勉強に取り掛かる方が、急がば回れになると思います。

ですので、願わくば、
①キャリアップ(スキルアップ)として、RPA習得を本人が望んでいる
②パソコンを長時間使っていても、さほど苦痛にならない
③自動化を予定しているアプリケーションの操作方法を、マスターしている。もしくはすぐ理解出来るポテンシャルがある。

といった条件を満たす人が社内にいらっしゃり、その人から自発的に手を挙げて貰うことが好ましいと思われます。

また、運用保守のことも考えるとすれば、追加として、
・今後、長く働いてくれそうな人
・可能であれば、社内に2名以上習得者が欲しい(退職・異動時に備えて)
という条件が満たせれば、ベターだと思います。

ちなみに、上記③に関しては、弊社がロボット作成を受ける場合も同じです。

エクセルやWindowsの操作方法はともかく、ほとんどのケースにおいて自動化対象のアプリケーションの操作方法については、知識ゼロの状態からスタートします。

そこから、操作方法と手順をご教授頂き、RPAツールに落とし込むという作業を行っていますが、そのアプリケーションに「精通」する必要はなく、必要最低限の操作方法と仕組みを理解できれば、RPAツールでロボットを作る上では問題ありません。

 

以上、議題「RPA習得は簡単なの?それとも難しいの?」に関しての結論としましては、

『全体を通して難易度は高くないが、(社内運用となると)求められる知識の幅は広い』

但し、Windowsにある程度精通しているというのが前提条件になります。(「アカウント」とか「拡張子」といった単語の意味が分からない場合はITパスポートを先にオススメ)

というのが、私個人の感想です。

ですので、RPAツールの社内導入をマネジメントする立場の方には、「社内業務の自動化を一気に目指すのではなく、学習者の成長度合いを見ながら、たとえロボットが急停止しても、それほど業務に支障の出ないものから手を付けていくようにする」ことを強くお勧めいたします。(※そもそも、少しのトラブルで業務にクリティカルな影響を与えるものを、RPAツールで自動化することは避けるべきです)