RPAエンジニアとして、RPA内製化を希望する、つまり社員の人にRPAツールの操作を覚えて貰い、自分たちで運営・保守していきたい!という企業を数多く見てきました。
結果として、当初思っていたより多くの会社が上手くいっていない印象があります。
外注するよりも、費用的に安くなり、トラブル時も即対応できるというメリットがありますので、できれば内製化したいという気持ちはとてもよく分かります。
では、何故上手くいっていないのでしょうか?
今回、私なりに感じたことを書いてみたいと思います。
■失敗理由(その1):会社が十分なバックアップをしていない
某大手自動車メーカーで、社内業務自動化プロジェクトの一環として、社員の人にもRPAツールを習得させ、ロボットを自分たちでも作ってみようという試みがありました。
私はロボット作成担当だったので、内製化プロジェクトには直接携わった訳ではありませんが、気になったので進捗をチェックしていました。
結果としては・・・失敗に終わっていましたね。
プロジェクトメンバーの多くの人が有名大学出身ということで、地頭が良く、コツコツ頑張れる人ばかりだったのですが、なぜ上手くいかなかったのでしょうか?
理由としては、今ある業務の傍ら、RPAツールの操作方法を1から勉強して、更にロボットを作るとなると、担当社員にとても負荷が掛かるものだったからです。
ただでさえ残業制限のある中、いくら外部のRPAエンジニアがフォローするとはいえ、物理的・時間的に出来るはずがなかったのです。
もし本気で内製化を実現したいのであれば、担当者の今の仕事を削減し、毎日数時間RPA習得に時間を充てることができる環境を与える必要があったのですね。
「RPAツールは簡単!すぐ使えるようになる!」と本気で言っているのは、元プログラマー出身といったプログラミングの下地がある人達だけです。
■失敗理由(その2):人選ミス
RPAツールの習得にあたって、地頭の良し悪しはそこまで問われず、巷で勘違いされているような「数学力」は、全く必要ありません。
四則演算できる「算数力」で十分です。
しかし、「誰でもすぐに習得出来るものですか?」と言われれば、NOと答えます。
世の中一般に、「プログラミングには、向き不向きがある」と言われています。
残念ながら、RPAもしかりです。(だって、ツールの裏でやっていることは、プログラミングと同じですから!)
では、RPA習得に何が必要なのでしょうか?
私が思うに、一番は「好奇心(RPAやITに対する興味)」だと思います。
そもそもパソコン自体に興味がなく、エクセルやワードはもちろん、Windowsの操作自体も怪しいという人には、難しいと思います。
パソコンを触ることがストレスに感じている方に任せるのは、辞めておいた方が良いでしょう。
会社から「費用は会社が持つから、RPAハンズオンセミナーに行ってこい!」と言われて、嫌々通って習得できるものではありません。
基本的な考え方・操作方法を覚えた後、実際に業務を対象としてロボットを作成していくことになる訳ですが、当然、行き詰る場面に多々出くわします。
その時は、自分の頭で考え、調べるという必要性が出てきます。
いわゆる「自走力」という自発的なモチベーションの有無を問われることになってくる訳ですが、特にRPAとなると周りに聞ける人がいるケースは少ないと思われますので、本人の「意思力」が必要になります。
もし、嫌々やっている場合には、自発的に上司に報告やヘルプをお願いするといったこともしませんから、そこから進みません。
担当者はRPA専任でやっているケースは少ないでしょうから、他業務の忙しさにかまけて、気が付けばRPA導入プロジェクトは自然消滅しているといった具合です。
■失敗理由(その3):社内体制の不備
その1にも似ていますが、こちらはロボット作成後に大きく関係してきます。
社内においてRPAツールの利用を推奨している会社は増えてきましたが、社内体制まで整っているところは多くないように感じます。
私が過去に関わったいくつかの会社では、「一応、会社としてはRPAツールを推奨している」ということになっていましたが、使いたい人が勝手に自分の業務だけ自動化しているといった具合でした。
ですので、特定の課において、パソコン好きな数人だけが率先して利用しているものの、そこから自然に広まるということはなく、作成したロボットもその人の退職に伴って削除されることになるような運用となっていました。
これでは、いつまで経っても「社内プロセスの最適化」は実現できません。
また、「野良ロボット」と呼ばれるセキュリティ上の問題も出てくるので、RPAツールの導入を本格化したいのであれば、一度プロジェクトとして、ドキュメントも作成して見える化すべきでしょう。
RPAによる自動化は、引継ぎ自体も簡略化することができますので、トータルで考えれば、時間を取って責任者・運用者なども含めた社内体制を整備しておくというのは、とても有益だと思うのです。